【STEP2】では、相続人を確定します。
相続税の申告にあたって、相続人を確定させることは必須です。
預貯金の解約などの相続手続きをする際にも相続人を確定させる必要があります。
税務署や金融機関に対して、相続人が誰になるのかを客観的に示す根拠資料として、「戸籍」などの公的な資料を取得します。
この記事では、戸籍の取集方法についても説明します。
借金などの債務が多い場合には、相続財産の放棄をするかの検討が必要な場合もあります。
相続の放棄は、原則相続開始を知った日から3か月以内に行わなくていけません。なるべく早く調査して、相続人を確定しましょう。
また、遺言書の有無によっても、手続きが変わってきますので、遺言書の確認も同時に行いましょう。
相続人の確定は、相続税申告に必須の手続きとなります。相続の放棄は3か月以内にする必要があるので、なるべく早めに相続人を確定させましょう!
法定相続人について
相続順位とは民法で決められた相続できる順番のこと
相続人が誰になるかについては、民法で定められています。民法で定められた相続人を法定相続人(ほうていそうぞくにん)と呼びます。
相続税を計算するにあたって、法定相続人を確定することは必須となります。
法定相続人になる人は、民法で順番が決められおり、相続人となる順番を「相続順位」といいます。
まず登場人物の整理をすると、亡くなった方を被相続人(ひそうぞくにん)といいます。
また、亡くなった方(被相続人)の財産を相続する方を相続人(そうぞくにん)といいます。
多くの場合には、配偶者やお子さんが相続人となります。相続人になれる方は配偶者、子以外には、親や兄弟姉妹の方になります。
相続順位は、
第1順位:子
第2順位:両親(直系尊属)
第3順位:兄弟姉妹
※配偶者は常に相続人となる。
という順番になっています。
配偶者は常に相続人となりますが、各順位の相続人候補者は、自分の順位よりも順位が上の人がいる場合には、その相続人候補者は相続人となることができません。
イメージしやすいように図を使って説明します。
第1順位 子(代襲相続した孫など)
相続関係図(第1順位、第2順位、第3順位の相続人候補者あり)
例えば、上の図のように夫が亡くなった場合、第1順位(子)、第2順位(両親)、第3順位(兄弟姉妹)がいるときには、第1順位の子がいますので、第2順位(両親)と第3順位(兄弟姉妹)は、相続人となることができません。
この場合、相続人は、常に相続人となる配偶者と第1順位の子の2人となります。
相続関係図(第1順位に代襲相続あり)
上記の図では、夫が亡くなる前に第1順位の子が亡くなっています。
第1順位の子に子供がいた場合、言い換えると亡くなった夫から見て、孫がいた場合には、第1順位の子が持っていた相続の権利(相続権)が子から孫へ移り、孫が代わって相続することができます。
これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)といい、代わって相続することとなった人(孫)を代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)といいます。
この場合ですと、常に相続人となる配偶者と孫の2人が相続人となります。
また、仮に孫が相続開始日以前に、亡くなっている場合には、ひ孫へ代襲相続(再代襲)され、それ以降も直系卑属がいる場合には代襲によって相続権が移っていきます。
前妻(前夫)との子も相続人となりますので注意しましょう!
第2順位(両親などの直系尊属)
相続関係図(第2順位、第3順位の相続人候補者あり)
次に上の図では、第1順位の子が夫よりも以前に亡くなっていて孫もおらず代襲がないため、次の順位(第2順位)の両親が相続人となります。
この場合も、配偶者は常に相続人となりますので、相続人としては、配偶者、両親の合計3人が相続人となります。 ※第3順位の兄弟姉妹は、相続人となることはできません。
両親が相続開始以前に亡くなっていて、祖父・祖母がご存命の場合には、祖父・祖母が第2順位として、相続人になります。
第3順位(兄弟姉妹※代襲した甥、姪)
相続関係図(第3順位のみ)
最後に上の図では、夫が亡くなる以前に、第1順位の子と第2順位の両親が亡くなっているため、第3順位である兄弟姉妹と常に相続人の配偶者が相続人となり、合計で2人が相続人となることになります。
兄弟姉妹の場合も、一度だけ代襲相続(甥、姪)が認められていますので注意しましょう。兄弟姉妹が相続人となる場合は、戸籍の収集が大変になります。司法書士などの専門家に相続人調査を依頼することも検討してみましょう!
相続人とならない人(相続放棄、欠格、排除など)
そもそも相続人とならない人
一般の方が、相続人になると思いがちだけど、そもそも相続人にならない人を挙げておきます。
・離婚した元配偶者
・内縁の妻(夫)
・義理の息子・娘(子の配偶者)
・孫(養子となっている孫、代襲相続した孫を除く)
・再婚相手の連れ子(養子となっている場合を除く)
・被相続人(内縁の夫)が認知していない子
・特別養子縁組をしていた場合の実方の直系尊属(実の両親など)
そもそも相続人とならない人であっても、養子となっている場合や代襲相続の場合には、相続人になりますので、注意しましょう。
相続放棄(そうぞくほうき)
相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がないことを相続放棄(そうぞくほうき)といいます。
借入金などの債務がプラスの財産(不動産、現預金、有価証券など)より多額の場合には、相続が開始したことを知った日から原則3か月以内に、家庭裁判所に相続の放棄の申述をすることで、借入金などの債務(プラスの財産もすべて)を放棄することができます。
被相続人の債務がどのぐらいあるか不明な場合で、相続したプラスの財産(不動産など)の限度で被相続人の債務を受け継ぐ限定承認(げんていしょうにん)という方法もあります。
相続放棄は、原則相続開始を知った日から3か月以内に行う必要がありますので、ご注意下さい。相続放棄があった場合には、その相続人の子に代襲相続されません。
相続欠格(そうぞくけっかく)
相続欠格とは、相続人が民法891条の相続欠格事由に該当する場合に、相続権を失わさせる制度のことをいいます。
被相続人の亡くなる前に、欠格者となった相続人が亡くなっていた場合には、その欠格者である相続人の相続権は、子に代襲相続されます。
第891条次に掲げる者は、相続人となることができない。
WIKIBOOKS https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC891%E6%9D%A1
相続について刑事事件でニュースになるようなことをした相続人は、欠格者となり相続人となれない場合があります。しかし、欠格者の子には、何の罪もありませんので、代襲相続は認められています。
相続廃除(そうぞくはいじょ)
相続廃除とは、相続権を持っている人を相続から外すことができる制度のことをいいます。
「自分が亡くなった場合に、この相続人だけには財産を渡したくない」と被相続人が考えた場合に家庭裁判所に請求して認められた場合には相続廃除ができます。
第892条遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
WIKIBOOKS https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC892%E6%9D%A1
相続廃除は、被相続人が生前に、自分で家庭裁判所で手続きをしていた場合や遺言書で相続廃除について書かれていた場合になります。欠格者と同様、廃除された者の子は代襲相続できます。
相続人を確定するための相続人調査
相続人を確定するためには、本籍地の所在地の市町村役場から戸籍謄本などを取得する必要があります。
戸籍を取得することで、「前妻との子がいた」、「愛人の子を認知していた」、「兄弟が亡くなっていて、甥姪が●●人いた」、「知らない人を養子にしていた」などが判明する場合もあります。
被相続人の出生から死亡までの戸籍は必要
まずは、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める必要があります。最後の本籍地が不明の場合には、本籍地を表示した住民票(除票)を取得することで、最後の本籍地がわかります。
被相続人の戸籍が現在戸籍だけで済むケースはほとんどありません。改正前の戸籍、婚姻時に作成された戸籍、婚姻前の戸籍、引っ越しで転籍する前の戸籍などがあります。
被相続人の戸籍を取得したら、相続人の現在戸籍を取得して相続人を確定します。子(第1順位)が相続人となる場合には、相続人の確定は比較的に簡単にできます。
しかし、相続人が第2、3順位(両親、兄弟姉妹など)になる場合には、前の順位となる人がいないことを証明するための戸籍も必要となってきます。
例えば、兄弟(第3順位)が相続人となる場合には、両親や祖父母(第2順位)が相続時点で亡くなっていることが確認できる戸籍も必要となります。
①被相続人の出生時から死亡時まで継続した戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
②第1順位の相続人のうち亡くなっている人がいる場合は、亡くなった人の出生時から死亡時までの継続した戸籍、
除籍、改製原戸籍謄本
③代襲相続人(孫など)がいる場合は、代襲相続人の戸籍謄本
④その他の相続人全員の戸籍謄本
①被相続人の出生時から死亡時まで継続した戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
②第1順位の相続人が亡くなっている場合は、亡くなった人の出生時から死亡時まで継続した戸籍、除籍、改製原
戸籍謄本
③その他相続人の戸籍謄本
or
配偶者のみが相続人となる場合
①被相続人の出生時から死亡時まで継続した戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
②被相続人の両親の出生時から死亡時まで継続した戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
③第1順位の相続人が亡くなっている場合は、死亡者の出生時から死亡時まで継続した戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
④第3順位の相続人が亡くなっている場合は、死亡者の出生時から死亡時まで継続した戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
⑤代襲相続人がいる場合は、代襲相続人の戸籍謄本
⑥代襲相続人が亡くなっている場合は、亡くなった人の死亡の記載ある戸籍謄本等
⑦その他相続人全員の戸籍謄本
甥・姪(第3順位の兄弟姉妹の子)などが相続人となる場合には、専門家でも相続人の確定が難しいケースがあります。第3順位の相続人がいる場合には、専門家に依頼することも検討してみましょう。
相続人の確定にかかる費用
相続人確定のためには、戸籍謄本等の取得手数料、戸籍を郵送してもらうための費用などがかかります。
戸籍謄本等の取得手数料
戸籍謄本は、役所で取得する必要があります。下記は、名古屋市の手数料となります。
【参考】名古屋市の手数料
1 | 戸籍全部(個人)事項証明書/戸籍謄(抄)本 | 1通450円 | 戸籍に記載された者の全部(一部)のものの写し |
2 | 除籍全部(個人)事項証明書/除籍謄(抄)本 | 1通750円 | 除籍に記載された者の全部(一部)のものの写し |
3 | 改製原戸籍謄(抄)本 | 1通750円 | 改製原戸籍に記載された者の全部(一部)のものの写し |
4 | 戸籍の附票の写し | 1通300円 | 本籍地で住所を証明するもの |
戸籍謄本等の必要部数は原則1部あればいいですが、相続手続きで各金融機関の手続きを同時並行で行いたい場合には、戸籍謄本等を多めに取得するといった方法もあります。
ただし、戸籍等の一式を1部揃えるだけでも、1万円を超える場合もありますので、ご注意下さい。
戸籍の取得費用以外にも、戸籍を郵送してもらう場合には、切手代や郵送手続き費用を定額小為替で支払う必要があります。
取得した戸籍謄本一式をもとに「法定相続情報一覧図」を作成して法務局に提出し、写しの交付を受ければ、戸籍謄本一式の代わりとして使用することができます。
法定相続情報一覧図は、無料で何枚でも取得することができます。
同時並行で金融機関の相続手続きを進めたい場合には、戸籍一式を複数部取得するのではなく、法定相続情報一覧図を取得することで費用が安く済みます。
相続人が確定したら、次はSTEP3の「財産の確定」手続きに移ります。