【STEP3】では、相続財産を確定していきます。
相続財産の調査
相続財産を確定するには、まずは相続財産の洗い出しが必要となります。下記に一般的な財産の探し方・資料について載せてあります。
財産項目 | 探し方・資料 |
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不動産 (土地、建物) | ・相続開始年度の課税明細書 ・相続開始年度の名寄帳 ・不動産の権利証 ・不動産の売買契約書 ・通帳の入出金履歴 (固定資産税、家賃収入) |
有価証券 (上場株式、投資信託など) | ・証券会社からの郵送物 (取引残高報告書など) ・配当金の支払い通知書 ・株主総会招集通知 ・PCのブックマーク、閲覧履歴 ・メール ・スマホに入っている証券会社アプリ ・通帳の入出金 |
預貯金 | ・キャッシュカード、通帳 ・定期証書 ・PCのブックマーク、閲覧履歴 ・メール ・スマホに入っている証券会社アプリ ・金融機関からの案内ハガキ、 カレンダーなど |
現金 | ・財布 ・自宅金庫、貸金庫 |
生命保険 ・火災保険 | ・保険証書 ・契約内容のお知らせなどの郵送物 ・メール ・確定申告(第2表)の保険料控除欄 ・通帳の入出金履歴(保険金、保険料) |
退職金 | ・勤務先からの支払い通知書 ・退職手当等受給者別支払調書 ※100万円超 |
自動車 | ・車検証 ・通帳の出金履歴(購入・売却代金) |
ゴルフ会員権 ・リゾート会員権 | ・会員権(預託金)の証書 ・契約書 |
受け取っていない給与 ・地代・税金・高額療養費の 還付金など | 通帳の入金履歴、申告書の控えなど |
生前贈与 | ・贈与契約書 ・贈与税の申告書 ・相続時精算課税制度選択届出書 ・通帳の出金履歴 |
教育資金 ・結婚資金の一括贈与 | ・贈与契約書 ・贈与税の申告書 ・非課税申告書 |
借入金 | ・ローン残高証明書 ・返済計画表の案内ハガキなど ・通帳の出金履歴 |
未払の税金、入院代、施設代、 クレジットカード代、預り敷金など | 申告書の控え、施設の契約書、 請求書、領収書、通帳の出金履歴、 賃貸借契約書など |
葬式費用 | 請求書、領収書、通帳の出金履歴, メモなど |
通帳の入・出金履歴から追加で財産が見つかることがあります。特に、相続開始後の入出金については、相続財産に含める可能性が高く漏れやすい財産になりますので、注意しましょう!スマートフォンから発見できる財産も多いので、確認しましょう。
相続財産
相続財産は、大きく分けて下記の3つに分類されます。
①相続税がかかる財産(プラスの財産)
②相続税から差し引ける財産(マイナスの財産)
③相続税がかからない財産(非課税の財産)
相続財産は、エクセルなどで相続財産一覧を作成すると管理しやすいです。
⇒必要資料準備ガイドや相続税も試算できる無料の相続財産一覧シートはこちら
①相続税がかかる財産(プラスの財産)
相続や遺贈によって取得した財産(本来の相続財産)
相続税は、原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含みます。)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。
相続財産の対象となる財産は、皆さんが考えているよりも、かなり範囲が広いものとなります。換金できるようなものは、原則すべて相続財産となります。
例えば、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋、貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるものをいいます。
その他にも、家を増改築した場合のリフォーム工事代や換金可能なポイントや保険事故が発生していない生命保険に関する権利についても相続財産として計上する場合があります。
相続財産と対象となるものは、かなり範囲が広いです。
<土地>
土地については、路線価方式と倍率方式という2つの評価方法があります。
路線価方式は、市街地にある宅地の評価に用いる評価方法です。評価する宅地が面している道路に付設された価格(路線価)をもとに評価額を計算します。
路線価×宅地面積(㎡)=評価額 ※画地調整率については省略
路線価が定められていない地域については、倍率方式で評価額を計算します。
固定資産税評価額×倍率=評価額
路線価方式か倍率方式のどちらで評価するかは、国税庁サイトや全国地価マップというサイトで調べられます。
<家屋>
家屋の相続税評価額は、固定資産税の評価額に1.0を乗じた価格となります。
例えば、ご自宅の固定資産税の評価額が500万円なら、500万円が相続税の評価額となります。ただし、アパート、貸家などで他人に貸している場合には、評価が下がる場合があります。
(自用家屋)
固定資産税評価額×1.0=評価額
(貸 家)
固定資産税評価額×1.0×(1-借家権割合)=評価額
<有価証券>
証券取引所に上場されている株式(上場株式)は、下記の4つの方法で計算した価額のうち一番低い価額で評価します。
1株あたりの金額(※)×所有株式数
※下記のうち、一番低い金額
①課税時期(相続開始時点)の終値
②課税時期の属する月の毎日の終値の月平均
③課税時期の前月の毎日の終値の月平均
④課税時期の前々月の毎日の終値の月平均
株価は短期的に急騰したり暴落したりするので、課税の公平を図るために、4つの方法が認められています。
<現預金>
金融機関から相続開始日時点(亡くなった日)の残高証明書を取得しましょう。
入院代や葬儀費用のために、相続開始直前に引き出した現金についても、相続財産に含める必要がありますので、注意してください。
直前に引き出したお金以外にも、貸金庫やタンス預金として家に多額の現金がある場合がありますので、注意しましょう。
<自動車>
自動車は、精通者意見(車屋さんの査定価格)などにより評価します。
<ゴルフ会員権(リゾート会員権)>
ゴルフ会員権(リゾート会員権)は、取引相場のあるゴルフ会員権(リゾート会員権)で預託金が無ければ、下記の算式で相続税評価額が算定できます。
取引相場×0.7
<生存給付金など>
生存給付金については、実際に受け取れる金額などにより評価します。
みなし相続財産
例えば、被相続人が亡くなって受け取る死亡保険金などは被相続人が元々所有していた財産ではないので、本来の相続財産ではありません。
しかし、生命保険金も相続によって受け取るものなので、相続税法上では相続や遺贈によって取得した財産とみなして課税することとしています。
このような財産を本来の財産と区別して、「みなし相続財産」といいます。
<生命保険・死亡退職金>
生命保険金・死亡退職金についても、相続税の計算上、相続財産に含まれます。
生命保険については、被相続が保険料を負担していたものが対象となります。
死亡退職金については、在職中に死亡した場合に、被相続人に支払われる予定だった退職金が遺族に支払われた場合はみなし相続財産として相続財産に含まれます。
ただし、生命保険金・退職金については、非課税枠があり、「法定相続人の数×500万円」までは、相続税の計算上対象になりません。
<生命保険契約に関する権利>
生命保険の契約者が配偶者で、被保険者も配偶者として生命保険に加入していて、その保険料を被相続人が支払っていた場合には、被保険者は配偶者なので被相続人の死亡により生命保険金は支払われません。
しかし、その生命保険契約に関する権利は、被相続人の死亡により消滅しませんので、権利は相続されることになります。
評価額は、生命保険会社に問い合わせを行い解約返戻金相当額等の証明書(残高証明書のようなもの)を取得しましょう。
生命保険については、被相続人が被保険者でなくても、被相続人(亡くなった方)が保険料の支払いをしている場合には、相続財産に含まれますので、注意しましょう。
<定期金に関する権利>
定期金とは年金のように定期的にお金が支払われるものといいます。
この財産は、まだ給付事由が発生していない年金契約で、被相続人が掛金を負担していて、配偶者などの親族が契約者となっている場合、契約者が相続・遺贈によって、この権利を取得したものとみなされ、相続税が課されます。
評価額は、生命保険会社に問い合わせを行い解約返戻金相当額等の証明書(残高証明書のようなもの)を取得しましょう。
<保証期間付定期金に関する権利>
保証期間付きの契約で個人年金に加入して契約者本人が保険料も負担していた場合に、保証期間内に死亡したときは、残りの年金を受け取れる期間について遺族が年金(もしくは一時金)を受け取ることができます。
この場合、遺族は相続または遺贈により年金受給権を取得したものとみなされ、相続税が課されます。
評価額は、生命保険会社に問い合わせを行い解約返戻金相当額等の証明書(残高証明書のようなもの)を取得しましょう。
<名義財産>
被相続人が孫など名義で金融機関の口座を作っていて、その口座に被相続人のお金が入金されているような場合には、名義財産として相続財産に含まれる可能性があります。
その他にも、被相続人が生活費として配偶者に渡していたお金をやりくりして、専業主婦の口座に入金されているような場合(いわゆる「へそくり」)には、被相続人から配偶者への贈与と認められない場合には、相続財産として財産計上する場合があります。
名義財産の判定は、税理士でも判断に迷うことが多いので、名義財産と思われる財産が高額になる場合は、専門家である税理士に相談された方が良いと思われます。
親族名義の口座や生命保険などでも、被相続人(亡くなった方)が保険料を支払っていた場合には、相続財産となる場合がありますので、注意しましょう。
贈与財産
<相続開始前3年以内の贈与財産>
相続開始前3年以内に被相続人(亡くなった人)から、相続人に贈与があった場合には、3年遡ってその贈与が無かったものとして、相続財産に含められます。
例えば、2022年3月1日に相続があった場合、ちょうど3年前の2019年3月1日からの贈与が対象となります。
生前贈与の加算については、改正により2024年1月の贈与から取扱いが変わりました。相続開始時点により対応が異なりますので、注意してください。
<相続時精算課税制度に係る贈与財産>
被相続人から相続時精算課税制度を利用して子供が贈与を受けた場合、その子がこの制度の適用以後に被相続人からもらった財産については、原則として相続税の課税対象になります。
<教育資金・結婚子育て資金の一括贈与に係る非課税の管理残額>
教育資金・結婚子育て資金の一括贈与の特例を利用している場合には、金融機関を通じて、この制度を利用し贈与税の申告書を提出しています。
贈与者の死亡日における管理残額は、金融機関等の営業所等でご確認ください。
②相続税から差し引ける財産(マイナスの財産)
債務及び葬式費用
<債務>
相続開始時点(亡くなった日)に被相続人(亡くなった方)が、支払う義務があったものについては、相続財産から差し引くことができます。
最後に支払う病院代や施設の入居費、クレジットカード代、税金・公共料金などが挙げられます。
金融機関から借入金があった場合には、相続財産から差し引くことができます。
ただし、住宅ローンで団体信用生命保険(団信)に加入していた場合には、借入金が無かったものとして、相続財産から差し引くことができません。
<葬式費用>
葬式費用についても、相続財産から差し引くことができます。
葬儀会社へ支払った葬儀費用やお寺さんへのお布施などが該当します。
間違いやすいものとしては、四十九日以降の法要にかかる支払いや香典返しなどがありますが、これらは相続財産から差し引くことができません。
③相続税がかからない財産(非課税の財産)
- 墓地、仏壇、祭具などの日常礼拝の対象となるもの
- 相続人が取得した生命保険・死亡退職金のうち一定額(500万円×法定相続人の数)
- 相続税の申告期限までに国や地方自治体、特定の公益法人に寄付した相続財産
- 公益事業を目的とする公益事業用の財産
- 心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権 など